中小企業の可能性

岩澤硝子:岩澤宏太 × 浜野製作所:浜野慶一 × ヨシズミプレス:吉住 研

中小企業の可能性

非常に長い歴史をもっており、墨田区の中小企業を代表する3社。
そして、これからの中小企業の在り方・取り組みにも大きな影響を与えるであろう3社に、生産活動やそれぞれの仕事に対する想いなど、様々なお話を伺ってきました。

会社紹介

岩澤硝子全国で三社ほどしかないといわれている、醤油注ぎの蓋と瓶を製造し、研磨できる工場。 自社ブランドの江戸前醤油差しの他、有名ブランドのグラスや、大手飲食店の調味料入れなどの製造を手掛けている。

ヨシズミプレス金属の薄板材をプレスして製品を作っている。 事業分野の約半分は、文具関連で筆記具のクリップやノック、ハンコの部品を製造している。 他にも車載センサー、コネクター、電子部品など幅広い。

浜野製作所板金、プレス、機械加工など複合的な加工を得意とする金属加工工場。少量多品種に対応している。 第1回目からスミファに参加しており、今年は7回目。社長の浜野慶一氏はスミファの実行委員長を務めている。

浜野製作所にて対談

▲対談の様子

生産のお話

取材それぞれが扱う製品内容とその生産の特徴を教えて下さい。

岩澤名前の通りガラス製品を扱う会社です。メインの製品は「江戸前すり口醤油注ぎ」ですが、食器や雑貨品など、多種多様な製品を生産しています。
ガラスといえば皆さんが使うようなコップであったり、毎日当たり前に目の前にあるものだと思います。
しかし、実は生産過程においては色々と大変な部分もあるんです。
緻密さを求められている製品だと特に大変です。というのも、うちが扱う坩堝(るつぼ)を加熱しその内容物を溶解する坩堝(るつぼ)溶解でのガラス生産は、機械で硬さや重さが調整できないので感覚に頼るしかないんです。
ガラスは溶かして使えるようになるまで時間がかかるので、やってみて駄目だと2時間分くらい無駄になるときもあります。
半分くらい不良品が出る覚悟でやっています。(笑)
また、その窯のメンテナンスも大変で、窯を温めるときと冷ますときには、数日間かけなければいけません。
しかし一方で、精度に関してラフな製品もあります。例えば、食器は見た目の方が重要なので、1つ1つ全く同じでなければいけないというわけではなく、重さなどは結構ラフだったりするんです。

吉住金属プレス加工と金型の設計製作をメインとする会社です。
基本的には大きな部品ではなく、細かい部品を大量に生産するという方式をとっています。
細かい部品ってなんだ?って思うかもしれませんが、例えば、スマホだったり車だったり文房具だったりの小さな精密部品を生産しています。
プレス設備は早くから自動機に特化し、プレス加工に必要不可欠な金型も内製しているのが特徴です。
私たちの仕事は、どんなに小さな製品でも図面が有り、寸法規格が有ります。
規格は厳しいものだと0.01mmの精度が求められるので、製品を生み出す金型は当然0.01mm以下で作り込まなければなりません。
プレス工程では生産数量が多くなると、金型も摩耗して製品寸法のバラツキが大きくなってきます。
百分の数ミリの違いは目で見ただけでは分からないので、日々の検査や測定が欠かせません。
最初の品質をいかに維持、管理出来るかがこの仕事の難しい部分でもあり面白い部分でもあります。
そして、製品にいかに付加価値をつけていくか、プレス加工の可能性を考え日々仕事をしています。
例えば、クリップならメッキをしやすい形を提案するなど、後の工程や商品全体のことを考えるようにしています。

浜野浜野製作所は板金加工、プレス加工、機械加工など、複合的な金属加工ができますが、工場の規模や立地的に大量生産には向きません。
その代り少量多品種の製造に力を入れていて、最近ではお客さんと製品開発の根幹となる部分を共有し、設計・開発事業も展開しています。
会社としてのビジネスモデルが、単にものを作るだけの仕事から、少量の試作や設計・開発といったお客さんと深く関わる仕事に徐々にシフトしてきているんですよね。
それってものづくりにおいて非常に重要なことだと思っていて、今後もさらに地域やお客さんと深く関わっていきながら、良い製品を生産していきたいです。

岩澤硝子岩澤さん

ヨシズミプレス吉住さん

浜野製作所浜野さん

ガレージスミダについて

取材何故、ガレージスミダをつくったのですか?

浜野これからガラス屋さんや金属屋さんといった製造業で起業する人は少なくなっていきます。工場の数が減ることはあれど、劇的に増えることはないというのが現実。
そんな中、同業異業種他社と少しでも協力して切磋琢磨しながら成長していかないと、日本の経済成長を支えてきた、ものづくり全体の力が落ちていくと思うんです。
海外にも競合他社が多いので、QCD(Quality、Cost、Delivery、納期コスト品質)は守って当たり前。
じゃあどうやって生き残るのか?って考えたときに、社会が多様化することによって、小さな市場がたくさん誕生しているのに気付いたんですよ。
スミファ開催もガレージスミダの運営も、狙いは町工場の販路拡大にあって、これまでの「下請け」という仕事から自分たちで市場を作れるようになるためのステップとして考えています。
限られた牌(パイ)を奪い合うよりも、みんなで協力して新しいものを生み出す方が良い、そんな世の中にしたいと思って様々なことにチャレンジしているんです。



取材を終えて・・・

一口に「中小企業」と言っても、その会社やそこで働く人の思いはそれぞれです。
顧客の期待に応えるため、提案と製品の質に真摯に向き合う職人たち 作業の大変さから同業が減る中で、その文化を守るという使命感のもと生産している工場が下請け体質から脱却し、みんなで化学反応を起こしたいとチャレンジする企業…
日本の99.7%を占めるといわれる中小企業に対する私のイメージは大きく変化しました。
これからは日本を支えるだけでなく、引っ張る存在であってほしい、いや必ずそうなってくれるという力強さを感じられる対談でした。
今回は貴重なお話をして頂き、ありがとうございました。

取材担当:山本航己(早稲田大学)


おそらく、日本の多くの人たち、特に若者は中小企業の詳しい活動やその秘めたる力を知りません。
鵜飼ゼミの活動、そして今回の対談に参加させてもらう機会がなければ、私もそのうちの一人だったと思います。
これまでの日本を形作り、今後もその中核を担っていくであろう「中小企業」。
そこで働く人たちの技術の高さ・仕事に対する情熱・お客様への想いは計り知れません。
ぜひもっと多くの人たちに中小企業の凄さを伝えたい、知ってほしいと強く感じた素晴らしい対談でした。
お忙しい中貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。

取材担当:中村太一(早稲田大学)