東屋:木戸麻貴 × 硝子企画舎:井上 剛 × ちいさな硝子の本の博物館:村松栄理 × Leather Lab MEW:片野一恵
すみだ3M活動×スミファ!
まずは、みなさんそれぞれの活動を簡単にお願いします。
木戸うちが開館したのは創業90周年の時で、母のご縁で開館させてもらったんです。
ここにいてやっぱり墨田にはいろんな会社さんがあってモノづくりをしているところがあって、少しでも多くの人に見てもらったり接したりすることができればな、と思ったのがきっかけです。
母は、「外からいらした色んな方とお話しできるのがすごく楽しい」って言っていて、いらして下さった方に一生懸命両国や墨田のエリアのことを紹介するということをメインでしています。
100周年の時に自社ショップを作ったのでそういうのも見てもらったりして。そこの売り上げっていうのは全然上がらないんですけど(笑)
メインで活動している博物館の方とホームページを作ったことによってそこから新たなお仕事につながるお客さんなどに出会えました。
そういう意味で、3Mの活動っていうのはさせてもらってよかったなと思っています。
木戸(母)来て下さったお客様に「ここに来てよかった」って言って頂けるように皆様に平等にお話させて頂いています。
なんせ何事も楽しんでやらないとね。そういう精神でやっております。
村松うちは場所は区役所のすぐ近くです。ガラスに関する本や資料、写真集、作家さんの本など、ガラスに関係する本を850冊ぐらい収蔵していて、自由に閲覧できます。
また、同じ墨田区の錦糸町の工場で今でも手作りにこだわって吹きガラスという技法で作っています。
「現在は「うすはり」というすごい薄いグラスを自社ブランドとして扱っていて、シンプルなデザインをメインに作っているんですが、30年ほど前はいろんな種類のものをOEMといって受注をする形で作っていました。
お土産屋さん向けに色がついたお皿や花瓶、ペーパーウェイト、ガラス小物、雑貨……etcといった具合です。
ガラスの本の他には道具を置いているのと、職人さんが働いている様子を写真のパネルで展示しています。工場はちょっと危なかったりすごい狭かったりということで普段一般の方の見学を受け入れていないので、少しでも職人さんが作っている様子を使う人に見てもらえたら、と思って写真を展示しています。
博物館って感じではなくて結構カジュアルな雰囲気で、「なんのお店かなぁ〜」ってふらっといろんな人に入ってもらえるようにしています。
これをきっかけに「あ、墨田区ってものづくりの街なんだ」とか、「ガラスを今でも職人さんが下町で作ってるんだ」とか、もともと興味なかった人に知ってもらえたらいいなと思っています。
今はワークショップもやっています。ガラス販売をしているだけだと一定の人にしか来てもらえないので、ガラスの表面に自分で絵が彫れるという体験をやっています。
それをきっかけにあまりモノづくりに関わりがなかった人に来ていただけていますし、そこで3Mの宣伝をするときもあります。
もともと博物館目当てで来て頂ける方もちょっとはいらっしゃるんですが、その他の博物館を知らずに来られた方にも知っていただけるきっかけになればいいなということでやっています。
▲対談の様子
▲東屋にて対談
取材ワークショップは、1回にどれくらいの人数でやるんですか?
村松1時間で1枠1組、2名や4名の方が多いですね、修学旅行の方など6名がギリギリ入れます。
墨田区に住んでる方でもまだ3M知らない人がまだまだ多いので、区役所帰りにふらっと来られた方にこの3Mの話をすると「あら、全然知らなかったわ」って結構言われます。そのPR活動も兼ねてやっていきたいなと思っています。
取材ありがとうございます。
井上私はみなさんに比べると新参者かと思います。7年前に片野さんにお声掛けいただき3Mに参加しました。江東区で工房を持ってやっていたのを墨田区の錦糸町に引っ越すとき、ご近所ということでご挨拶したら「墨田区はこういう活動をしてる」と勧めていただいたのがきっかけです。
ガラス素材から始まることを幅広くやっています。日々量産をするようなプロダクトはなく、誰かに依頼をいただいてごく少量生産というかオーダーメイドを中心に建築インテリアを扱っています。
デザイナー設計士さんを相手に制作するしたり、ワークショップをしたり、修理をしたり、学校で教えたり…… ガラスに関わる事なんでもって感じでやってます。
私自身は墨田区とは関係ない滋賀県出身で、私の曽祖父がガラスや瓶を作る工場を明治からやっていて、今年で約135年、4代目です。私は、芸術系の大学を出てガラスのアート作品をやっています。
新しい工房では、9人のアート作家が集まって作業しています。まだ荷物が山積みの状態なので、うちとして3Mをなんかアピールするというよりも、まずはご挨拶というか、墨田区の方々に仲間入りさせていただいてありがとうございます、という立場の仕事と場所を設けています。
取材ということは、まだ展示とかは出来るような状態ではないということでしょうか?
井上そうですね。ショップスペースはスミファを目標にお迎えが出来るようにしています。
工房の方は製作をしなければならないのでもう動き出していまして、こちらは10月末・11月頭を目標に今準備をしています。
取材ありがとうございます。
片野私のところは、墨田区の石原というところでカバンの工房ショップをやらせて頂いてます。アトリエアミーチという名前でやらせて頂いてます。
もともと工房ショップというものをやっていたんですが、東京スカイツリーが墨田区に誘致が決まったあたりから職人体験という形でワークショップも少しやらせてもらうようになりました。
そしたらワークショップの方がなんか忙しくなっちゃって。やっぱり皆さん手を動かして物を作るってことを体験すると、物に愛情や愛着が湧いて、物づくりの知識に興味を持って下さるようになりました。
それから、鞄の業界は生産拠点が海外に移ってしまったので、後継・技を繋ぐところにスポっと穴が空いちゃった世代があります。
技術を繋がないと自分のところの生き残りも厳しいので、人材育成にも力を入れています。技術の認定制度とかに携わって技を継承しています。”技”って言っても特殊なすごい技ではないんですけれども。
さらに、余った革を使った教室を始めました。今はちょっとした手作りブームなんですが、やはり自分で作ったものを自分で使ったりお友達にあげるだけでなく、発表したり販売したりしたいという層が増えてきましたね。教室から作家さんになりたいっていう人が何人か出てきて、実際にそれでやっていく人も何人か出てきました。
3Mという点では、今はおかげ様でワークショプで小さいお子さんたちにも革に触れてもらう機会を増やせていて、そのときに「墨田区ってこういう地域だよ」「墨田区ってこういう人達がたくさんいるんだよ」「革の後ろ側って石鹸とかお化粧品とかに使われてるよ」「だから化粧水とか入れる瓶とかもガラスとして地域で発展したんだよ」というお話をさせて頂いて、革のことを知ってもらう。そんなことをやっていると、目に見えて結果が出てるかどうか分からないんですが、伝統の形成に一役買ってるかなぁと自己満足しながらやっています。
▲対談の様子
▲向かって左から取材の植田、相澤(早稲田大学)
3Mに関して、これからどのようにしていきたいかなどビジョンはございますか?
すみだ3M運動:http://sumida-3m.tokyo/
木戸 皆さん工房ショップなどで「教える」ことをやられていますが、うちは工房ショップは全然できていなくて、博物館でご覧いただいてご説明してっていうことしかできていなんです。なにかこれからするとしたら、他社さんや他の工房ショップさんとのコラボかなと思っています。
そういう意味で、スミファなどの繋がりを活かしたものを考えていかなきゃいけないな、と強く思っています。ただ、何をれやればいいのかちょっとまだ分からないっていう感じですね(笑)
取材皆で協力して……
木戸していかないともう……っていうのはすごく感じています。
村松お話をそのままつながせて頂くと、博物館とか工場とか工房とか、物づくり関係の人以外にもお店やってる人とかの地域のつながりを商店街だけじゃなくて墨田全体で作っていきたいですね。スカイツリーがオープンしてからというもの、墨田区内外、職業、年齢関係なくいろんなバックグラウンドを持った「墨田を盛り上げたいね」っていう人同士で自然につながりができているので、新しくお店やる人が居たらどんどん取り込んでいくというような(笑)
無理やりじゃなくて、ゆるいぬるい繋がりで全然いいと思うんですけど、墨田を知らなかった人にスカイツリーだけじゃなくて他にももっと面白いとこあるんだということを知ってもらえたらいいなぁ、と。
今、SNSが発達してるので、ちょっと普段足を踏み入れないような所でも、「こんなマニアックな職人さんいる〜」みたいなことでバズるかもしれないし(笑)
木戸地域がばらけてるからそこら辺は難しいところありますよね。
村松この間、新潟の芸術祭に行ってきたんですが、あそこは山道なので車がないと見にいけないんです。
それでもたくさんの人が集まって、わざわざみんな見にいくっていう……やっぱりそれってすごいことだなって。
墨田もなんかこうわざわざ自転車漕いでここ来た〜、という人ができるような魅力的な感じにしていけたらいいですね。
井上そうですね。僕はガラス屋からの視点でしか見られないのですが、墨田区とその周辺は日本のガラス文化の中心地なんです。
切子の職人さんがいたり吹きガラスだったり磨きの職人さんだったり。色んな職人さんがいて、それに関する材料のお店があって、それに関する機械を作る工場があるんですね。でも、あんまり連携がない。
たとえば切子職人さんは吹きガラスの現場には行かない、というより知らない。逆もそうです。
僕は実家がガラス瓶屋なんですが、ガラス工芸については専門学校で一通りの技法を学びました。今はいろんな分野で仕事をしていますし、学生に教えることもしていますので、そういう少し俯瞰していろんなものを見れている立場として墨田区に飛び込んできました。
僕自身の視点から見えるものをリンクさせてシェアして…… そうしてこれまでできなかった仕事をしていきたいです。
うちはさっきも言った通りオーダーメイドで作っていますが、例えば、これは工場で作った方がいいなというものは工場にお願いしています。
これは磨きの職人さんの方が得意だっていうのは切子の職人さんにお願いしたりとか。それを組み合わせたり割り振ったりというのがうちの役割ですね。「硝子企画舎」の名前もそんなところからつけているので。
さっきガラスなんでも屋って言ったのはそんなところもあって、作るだけじゃなくて「あそこにいけばいいですよ」っていう紹介・案内もやってます。
多分うちよりもあそこの方がいいですっていうことももちろんあるので。
取材硝子企画舎さんのご縁のある硝子関係の工場の方は墨田区が多いんですか?
井上墨田区に限らないですね。葛飾・江東…… 私自身転々として来たのでここだけじゃなくて、金沢とか。
でもここ墨田区というか東京にいることである仕事もあるので、ここを中心に色んなところで、「これだったらあの人が出来るだろう」とか「これだったらあの工場で出来るだろう」とか、人と人をつなげることをやっています。
取材ありがとうございます。
片野私は現状できていることと将来やることがあります。
みなさん家業を継いでいらっしゃいますよね、うちの社長も元を正せば三代目です。ということでつい2年前までは子供に継がせたかったんです。
「やっぱり子供と一緒にやりたい」って社長も言っていたし。
ただ、息子は現状を見ていて将来に展望を感じないらしく、違う方を向いてるんですね。
そこで、「あまりにも将来性がないと思われて子供に捨てられちゃうことをしてるってマズイんじゃないか」と思って、私と社長とスタッフと職人のみなさんでいろいろ模索中です。
いますぐ答えは帰ってこないけど見ていてくれる人に魅力があるような何かにならないとなぁと思っているんです。
▲東屋木戸さん
▲ちいさな硝子の本の博物館村松さん
▲硝子企画舎井上さん
▲Leather Lab MEW片野さん
取材を終えて・・・
今回の対談を通じて業種や沿革が全く違う企業でも似た様な事を考えていたりと共通する部分が多い事が分かりました。
また、企業が前進する為にどの様な姿勢で何をしているのかということを感じ取る事が出来たと思います。
取材担当:相澤一樹(早稲田大学)