モノづくりへの情熱と飽くなき挑戦

中空工房:今 清和 × チバプラス:千葉勇希 × 東京都立産業技術研究センター 墨田支所:後濱龍太

モノづくりへの情熱と飽くなき挑戦

ソフビ制作という今では失われつつあるロストテクノロジーの復刻を目指す中空工房の今氏。
プラスチック製品を大量生産する工場を持つチバプラスの千葉氏。
そして、製品の開発や評価をサポートする東京都立産業技術研究センター墨田支所の後濱氏。
三者三様の視点からモノづくりへの想いを語っていただいた。

モノづくりに関わる上での心得は?

付加価値という点は間違いなく我々が考えていることです。
モノを作っていくと段々と世の中にあるモノはどのように作られているかが分かってきます。
僕は作れないモノは無いと思っています。何でも作れます。
考えればどのように作られているかは、ある程度答えにたどり着けますが、我社が作っているモノは誰かに真似できるモノは絶対に作らないようにしています。我々が作らなきゃいけないものしか作らないです。
そこが1つのポイントなのかなと思います。

千葉うちは自分の父が創業して私は2代目で、大量生産の請け仕事でバンバン作っているのですが、最近の話で言うと、ストローといったプラスチック製の安価なモノが目の敵にされているじゃないですか。
昔の高度経済成長期は安価で軽くて割れないしいいよね、と言われていたプラスチック製のモノが、近年では人口が減り逆にプラスチックが余ってしまった中で、ゴミの問題があり今回の問題になっているじゃないですか。
そういった意味では時代が大きく変わってきていて、うちみたいな大量生産は非常に今は過渡期で、後継者問題や利益の出しにくい問題も絡んでいます。
その中で我々が扱う射出成型という分野でしか表現できない部分を今考えている最中です。

後濱私たちは試験研究機関として、企業のモノづくりを支援しています。
技術シーズという言い方をするのですが、最初の基となるアイデアの部分を頑張って思い付く。それを実際に形にしてみる。
まだまだブラッシュアップしていかなければならないモノも含めてです。技術を開発して、特許性などがあればきちんと整理して特許出願登録をします。
研究事業として技術開発を行い、学会で発表するですとか、そういったことをして基盤技術を蓄積して様々な企業さんからの相談に対応しています。
企業の方たちが必要とする技術と我々の技術を上手くマッチングして、実際に一緒にブラッシュアップをして、世の中に出していきます。
技術開発を単独でやることもありますし、最初の段階から共同研究として、ある程度アイデアを持つ人たちが集まってスタートすることもあります。
1番最初の思い付き、アイデアを目に見えるようにする、触れるようにするというのが私のモノづくりとの関わり方です。

中空工房にて対談

▲向かって左から中空工房今氏、チバプラス千葉氏、東京都立産業技術研究センター 墨田支所後濱氏

これからの挑戦

工房に関してはうちが核となって情報を発信して、この技術を公にしたいです。公にすることによって、今まで製造行程を知らなかった人たちが、それを採用してくれる可能性があるじゃないですか。
ソフビの人形を見て、パチンコのパーツを作れると思わないように、どこで人に刺さるかが分からないので、色々なジャンルの人たちに製造行程をお伝えして、メリットとデメリットをお伝えしていきたいです。
そしてその後に、若い人たちに継承して欲しいなと思っているので、単純にうちで教えてうちで働いてもらうことも選択肢の1つだと思いますが、工房にある機械をレンタルして作業をできる人を増やしたいという気持ちもあります。
あと実はソフビの製造方法はもう2つあって、その機械も新たに取り入れたいと思っています。

後濱機械が変わるとできる形状も変わるのですか?

変わります。ただ大きくは変わらないです。
生産効率は上がります。
新たな機械を同時に使うことによって、今までどれでやってもできなかったことも、できるようになると思うので、それはやりたいと思います。

千葉大量生産だけではなく開発・提案型への業務転換と同時に何百種類もある樹脂を試せるような環境を整えて、お客さんが自分の型を持ってきて、オリジナルの作品を作れるような、試作・開発型の射出整形というのを、形を変えながら、面白くできないかなと思っていますね。

後濱学習をやめないことですね。
産業構造が変わり、新しい技術が出てきてニーズが変わる状況で、それに対応する製品の開発や、その製品の良さを示すにはどうすれば良いかを日々考えなくはなりません。
公的機関として良さを言葉というよりも数字で客観的に示す必要があり、数値やグラフを導くためにはどういった測定や解析をすればいいのか。そこには専門知識が必要になります。
すでに得意としているシステム開発の知識に加えて、人間の計測解析といった私にとって新しい専門知識を吸収しつつ、それを製品の評価に結びつけるための段取りを同時に考えていく必要があります。
企業のモノづくりへの挑戦を支援するために、専門技術を広く深くしていく。
そのためにこれからも学習をやめることはありません。

中空工房今氏

チバプラス千葉氏

挑戦の行動力はどこから生まれるのですか?

僕の場合は何かを生み出すのが仕事です。
誰かにできたことは自分でもできると思っているので、誰もまだ気づいていないことや、誰もまだやっていないことにチャレンジしたいという気持ちが常にあります。それが原動力となって色々なことにチャレンジしているんじゃないのかなと思います。
やっぱり面白いこととか楽しいことをやっていたいじゃないですか。

千葉墨田は橫の繋がりが多いので、影響される部分もありますし、競争意識やライバル心もありますし、そういった部分がモチベーションに繋がっているのかなと思います。

後濱僕は小さい頃の夢が発明家だったんですよ。
今、世の中でまだ解決されていない課題やコトを深く考えていると、解決策になりうる道具やシステム、モノの形がイメージの中に浮んできます。
浮かぶと、それを実際に作りたくなりますね。
それの繰り返しが行動の原動力になっていると思います。

対談場所である中空工房を見学させていただきました!


取材を終えて・・・

異なる業種でご活躍される皆さんから様々なお話を伺うにつれて、挑戦することの重要性を痛感させられました。
また、中空工房さんのソフビづくりを実際に見せていただき、普段目にすることのない特殊な機械を前に驚きを隠しきれませんでした。
対談を快く受け入れていただき、ありがとうございました。

取材担当:成瀬 允(早稲田大学)