企業対談 vol.04「モノづくりと家族」
金型を使った設備を用いた金属加工を手掛ける岩井金属金型製作所の3代目社長である岩井保王さんと、さまざまな種類のはさみの製作を手掛ける石宏製作所の社長の石田明雄さん。
岩井さんの工場の一角をお借りして、このおふたりに「工場と家族」というテーマで対談をしていただきました。
切っても切り離せない関係
岩井金属金型製作所:岩井自分の仕事=家族の支えみたいなところがあるから、非常に切っても切り離せない関係。
自分が子供のころは、クラスを見回してもほとんどが自営業だったから、その家が何をやっているかはエンブレムのような感じだった。そういう感覚があったから、自分の子供も工場で育てたいなって思った
石宏製作所:石田よその子が来たときも、うちこういうことやっているんだよって自慢ができる。それが自営業のいいところ。
でも子供からみると、うちの親はいつも家にいるんだよな~って少し思うときもあると。でもいざ自分が親になると、自営業でよかったなって思う。
子供の成長も毎日見られるし、学校から帰ってきたら今日なんかあったの?って聞く。
なかなか答えない年頃にはなってくるけれど、それでもただいまって言えばおかえりって言うし、いってきますって言えばいってらっしゃいって言うし、友達が来たらいらっしゃいって言う。
岩井世の中のおやじに比べたら非常に距離感は近い。
ずっと小さいころから工場でやっているし、宿題で何か作るときにはちょっかいを出して、一緒に部品買いに行ったりした。ときには納品に一緒に連れて行くこともある。
バイトしたいって言われると、集金に行かせたりもする。この前も次女がお得意さんのところに集金に行って、小切手を受け取って震えながら帰ってきた。
そういうことやらせると子供は物怖じしなくなる。
娘と工場
岩井さんは中学3年生、高校2年生、専門学校1年生の3人の娘さんの父親、石田さんは小学校5年生の一人娘を持つ。
岩井石宏さんのところの娘さん、去年のスミファで少し話したんだけど、「本当にお父さんのお仕事大好きで。」そういう子を広めたい。
スミファをやるっていっても、そういう子が、周りの工場で好きなところを見つけて、仕事をするってとこまでいかなくても、こういうところがあるんだなって知って、地域を好きになってほしいな。
岩井根本的には、生きていくためにお金を稼ぎ、それでご飯を食べていかないといけない。それを自分の子供が、能力として、身にしていけるかどうかっていうのが親としての心配なところ。そういうのを、育んでほしいな。
自営業者っていうのは、その非常に根底の泥臭いところに生きている人たちなんだけど、そういった人たちの知恵、生き様を感じ取ってもらえたらいいと思うし、自分のこどもたちにもそういうのを小さいころから味わわせて身につけさせたいなって思う。
石田どんなものでも、すぐできるわけじゃなくて、いろんな人の手を通って初めてできるんだよっていうのをわかってもらえればいいな。
どんなものでも、名刺一つにしても、簡単にできるものじゃない。
それこそ、紙を作って、ロールにして、切って、印刷は印刷工にもっていかないといけないし、じゃあその印刷機は誰が作っているのっていうとやっぱり誰かが作っているし、簡単にできるものじゃないってことをみなさんが分かれば。
そのうえでみんな生活しているし、決してひとりで生きているわけじゃないって。
スミファと家族
石田去年も何人か家族連れで小さい子が来て、小さい子にもハンマー持たせてはさみを叩かせた。
だいたい子供のほうがのみ込みが早いから、子供がお父さんそうじゃないって子供が言うと、お父さんもむきになって、家族で楽しんでいた。
作業したりなんか作るって、だいたい子供がやっていると大人のほうが夢中になっちゃう。そういうのを見ているのも楽しい。
岩井以前、子ども向けのワークショップやったときも、やっぱりお父さんお母さんの熱意がすごい。
子供にやらせてあげてくださいって感じ(笑)
石田見たことがない、やったことがないことを体験するのは大人子供関係なく楽しい。大人だとなおさら、自分の仕事以外のこと見たことない世界を見るのに夢中になる。
大人として聞くのが恥ずかしいことも、子供をだしに使って聞いてみるとか、スミファの機会を利用して、いろいろなものを体験してもらえたら。
岩井墨田区の工場がどんどん減っていっている。やはり、工場がたくさんあったころって、血気盛んだったように感じる。
だんだん血の気が薄くなってきているのが寂しい。日中は外に働きに行って、寝るために帰るという感じだから、どうしても地元愛がだんだん薄れてきてしまうのかな。
石田そういう環境が少なくなってきているから、工場の跡継ぎなどもなかなか厳しい状況のところもあるけれど、それでもファンが増えればいいのかなって。
これで終わったとしても、あのはさみよかったねって語り継がれるような。少しずつ輪が広がればそれでいいかなとも思う。
スミファに向けてひとこと
石田今回土曜日しか出られないけど、それでも来てくれた人に来てよかったな、楽しかったなって思ってもらえるような雰囲気づくりができればなって。
岩井いろいろなところで工場見学をやり始めているけれど、墨田特有のものを感じ取ってくれたらいいな。
深いところを見ていって、つかんでくれたらなって。そして願わくは工場やってくれないかなって。
取材担当者より一言
最初は緊張しましたが、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。お二人のお話に引き込まれて、時間が経つのがあっという間でした。ご協力いただきありがとうございました!
取材担当:松岡成美(早稲田大学)
取材担当者より一言
お忙しいところ取材に時間を割いていただきありがとうございました!お二人のお仕事への熱意がビシバシと伝わってきて、基礎体温が3度は上がったと思います!
取材担当:浜田竜太郎(早稲田大学)
記事:松岡成美(早稲田大学)
企業担当:浜田竜太郎(早稲田大学)
取材:松岡成美(早稲田大学)・浜田竜太郎(早稲田大学)