スミファを通じて、繋がって

石宏製作所:石田明雄 × 望月印刷:田中一博

スミファを通じて、繋がって

前田まずお聞きしたいと思ったのが、望月印刷・田中さんが石宏製作所・石田さんにお話を聞きたい
というように思った経緯についてです。
対談は望月印刷さんからの希望だとコラボレーションの理由の欄に書いてあって、その経緯について聞きたいな、と思ったのですけど。

田中純粋にその技術が見たかったからかな。医療用のはさみの作り方や技術についてぜひ一度、拝見したかったっていう。

石田確かになかなか近所にはさみ作ってる人がいるかっていうと…なかなか。

田中ねぇ、多分今大量生産モノになっちゃってる。

石田そうですね。

田中で、いろいろ1本1本、削って作ってっていうのがすごく興味があって。もう純粋に興味だけ。

岩瀬興味だけ(笑)

田中あの、石田さんを指名させていただいたっていう。

一同

前田そうなんですね。


石宏製作所の石田さん

望月印刷の田中さん


お互いを知るようになったきっかけ、スミファとは?

前田もともとお互いをいつから知っていらっしゃったんでしょうか?

田中スミファで・・・結構前からですよね。

石田スミファに参加させて頂いたのは今回入れて4回ぐらいですかね。

田中うちの方が後から入っているから、一昨年かな、スミファの時にお会いして、ちょっとお話しさせて頂いたりして、こういうことしてる会社さんがあるんだって、

前田なるほど。

田中そう、スミファがきっかけですよね。

石田結構いろんな会社さんと知り合いになって、それこそ会社なりなおかつ個人の方と知り合えるっていうのがスミファのいいところでもあり。で、やっていくと外部の人とかも見学に来ていただけるし。

田中そうですね。

石田それに大人から子供まで。普段仕事だけだったら絶対会えない人ばかりですね。

田中そうですね、それはいろいろ。

石田大きいですね。

田中いろんな方とお会いできて。

石田興味を持っていただけて。

田中結構仕事の話になったりとかすると「あぁ、もうちょっと本当にその現場見てみたいなぁ」というようなことも起こったりして。あと本当に勉強になる人たちが多いので、そういうのが一番ですね。


▲対談の様子

▲実際作っているはさみを体験


石宏製作所 はさみをつくるまで・大変なこと

岩瀬少し話が変わってしまうのですが、石宏製作所さんの商品で一番開発に時間がかかったり、熟考した商品を教えて頂いてもよろしいですか?商品、サービスなど。

石田そうですね、もともと医療用のはさみはこっちから提供するというより問屋さんから「これを作ってください」っていうのがメインなんですね。受注生産なので、熟考っていうのは別になく、ただ作り方がなかなか手に身につくまでが大変なんです。なかなかそれこそ、機械でやってもらえるわけじゃなくて自分がハンマーで叩いて、削って、また調整する。出来そうで図面には出ない細かい感覚。それが身につくまではもう思うようにいかないという。結構かかりますね。

岩瀬手が慣れるまでに時間がかかる。

石田手が慣れて、意識しなくても叩けるようになるっていう。

石田それが身につくまでが大変ですね。で、それだけだとだんだん欲が出てきて一般の人にも知ってもらいたい。

田中そうですよね。

石田せっかくだから、誰かに、お医者さん以外の、普段はさみを使ってる人たちにも知ってほしいっていうだんだん欲が出てきて、それで「すみだモダン」っていう、墨田区のブランド認証事業が2010年から始まって、翌年の11年に申し込んだんですよね。そうしたら認証していただけて、それで皆さんに知ってもらうきっかけが出来て、それでスカイツリーのテープカットにも使っていただいて、それで「わーっ」と一気に。

岩瀬一気にみんなが?

石田みんなが。日本全国に知っていただけるきっかけになって。ニュースでいろいろね、取り上げていただいて。『ひるおび』とか。

岩瀬すごい!!

石田実は医療用だけじゃなくて友達の結婚祝いに自分で作ったハサミをあげたりしていたこともあるんです。それが、モチベーションにもつながったりしていて。喜ぶ顔を見ていると、よかったなって思ったり。
そういう喜びが分かるという点でも、医療用だけじゃわからない世界があるし、スミファでも、みんなに見ていただけることによっての喜びもありますし。ただ閉鎖的に、仕事をしているだけだったら見てもらえる喜びもないし。説明するっていう喜びも得られので、それがいいきっかけですね。

岩瀬たしかに!石田さんがご自身の作るはさみをすみだモダンに認めてもらおうと動かれたきっかけは、もっと知ってもらいたいという思いだったんですね。

石田そうですね。自分が仕事をするだけで満足なんですけど、ちょっと欲が出てくると、もっと知ってほしいという気持ちが出てくる。それはどの職業でも同じだと思います。たとえば印刷会社だったら、こんな技術があるんだよと言いたいものでも、受け取る側からは印刷物としか受け取られなかったり。でもスミファだったら「印刷している人」が主役。工場も主役だし、ある意味機械も主役になれる。みんなが主役になれる環境だと思います。それってちょっと嬉しいですよね。

石田やっぱり情熱がある人のところには近づきたくなりますよね。火にあたりたくなるみたいな。そんな情熱を、年に1回のスミファでアピールしていくことでもっと知りたいというきっかけづくりになればいいし、墨田区の他の会社や工場の方と関わることで、同じ悩みもあるんだなと分かったり、刺激を受けたり、得るものも多くあります。なんとかここを盛り上げたいという情熱のある人たちがいて、なんとかそれに応えたいという気持ちもあります。誰かが主役というより、みんなが主役。みんなで盛り上げようという気持ちがあるから、お客さんも来たいと思えるだろうし。

前田参加する側にとっても、企業の方がどのようなモチベーションでスミファにいらっしゃっているのかって伝わってくる気がするんですよね。義務でやるというよりも、それで知ってもらいたいとか、自分も刺激を受けたいという前向きな姿勢が感じられると、「あ、楽しいな」と思うんじゃないかと感じます。

岩瀬去年スミファに行ったんですけど、やっぱりどの企業さんも楽しそうに説明されていて、こっちもすごく楽しいですし、向こうも楽しそうで。子供が教えてくれたりしてくれて、見る側としても興味が持てて楽しかったです。

田中でもね、やっぱりうちの工場の人たちも、だんだん場慣れしてきたかなって思うんだよね。前は見学客が来ても、線を引くようなところがあったんだけど、最近はだいぶやわらかく接してくれるようになった。

石田あと、初めての時、どう説明すればわかってくれるのかを考えるのが難しかったな。そんなに興味持っていないだろうって勝手に思っていて。来ても何見るんだろうなとか。こんなに面白いものなのかなって思ってたけど、回を重ねるごとに説明も上手くなっていって、普通にやってることを話せばいいんだってわかった。ハンマー叩くだけで喜んでくれるんだとかね。

一同

石田「あ、これでいいんだ」と分かったら、心のハードルが下がってきて。きっと望月印刷さんの工場の人たちもそうだったと思う。皆興味を持ってきてくれているんだと分かって変化して部分もあるんじゃないかと思います。


▲用途の異なるはさみを1本1本説明

▲スミファ当日、皆様も体験できる『叩く』工程

▲お二人と対談者(向かって左から前田・石田・田中・岩瀬)


石宏製作所の石田さんと望月印刷の田中さんと対談させていただきました。機械ではなく人間ならではの「慣れ」や、資料には残っていないような「言葉で伝えられてきた技術」についてお話をうかがい、改めて職人さん、そして墨田区の工場に秘められた可能性を感じました。スミファが、この墨田区の工場をさらに多くの方に知ってもらうきっかけになればと思います。

取材担当:岩瀬柚香(早稲田大学)

対談の中で、お二人ともご自身の中のスミファの存在の大きさについて語られていたのが印象的でした。望月印刷の田中さんにとっては、お客さんが印刷に興味を持ってもらえるようになる場であり、工場の仲間の変化を感じられる場で、石宏製作所の石田さんにとっては、普段は一人でなさっている仕事を公開し、お客さんと触れ合うことで知ってもらう楽しさを感じられる場であり、自分の仕事を客観視できる場なのだとわかりました。スミファは来場されるお客さんだけでなく職人さんの刺激の源になっているのだと知ることができました。

取材担当:前田万由子(早稲田大学)