ちいさな硝子の本の博物館:村松栄理 × どうち製本所:堂地治美 × 東日本金属:石川絢子 × 浜野製作所:清水日向子
工場の現場で働く女性の視点
働く女性対談ということで、女性が町工場で働くようになったきっかけから、仕事のやりがいに至るまで、たくさんお話を聞いて参りました。東日本金属にて鋳物製造のお仕事をされている石川さん、浜野製作所にて事務として活動をしている清水さん、どうち製本所にて製本のお仕事をされている堂地さん、ちいさな硝子の本の博物館にてガラス製品の商品販売やワークショップを行っている館長の村松さん。
業種はそれぞれ異なった四名の方々に『女性が工場で働くこと』について対談して頂きました。
取材この仕事を始めたきっかけはなんですか?
堂地私は実家が製本所だったから、夫がそれを手伝うようになったのがきっかけで、仕事を見ているうちに、楽しそうだなあと思い始めたのがきっかけでした。
清水町工場に来る人の多くは志があったりするけど、私は働かないと食べていけないと思って新卒で見つけたのが浜野製作所でした。製造業に対する知識はゼロでしたが、当時の浜野製作所の求人対象が「事務職」ながら、業務内容は広報やイベント企画など様々あって、楽しそうだなと思い就職を決意しました。
石川私は小さい頃から金属が好きで、金属に触る仕事がしたいとは思っていました。まだ漠然と金属加工の仕事がしたいと思っていた時に、うちの会社に出会ったのがきっかけです。
村松私は、手作りガラスの工場を父が経営していて、この職人さんの手仕事の硝子をもっと色々な人に知ってもらいたい、というのと、この工場で収集していた硝子に関係する本がたくさんあって、もっと色んな人に見て貰えたらいいなということで資料館を兼ねた硝子の販売を始めたのがきっかけです。
▲向かって左、ちいさな硝子の本の博物館の説明をしてくださっている村松さん
一番やりがいを感じる瞬間はいつですか?
堂地物を作り上げる瞬間はもちろんそうだけども、それ以上に実際に使っている人に偶然出くわした時が一番嬉しいです。
清水うちの会社はパーツのような物が多いので、自分たちの手元に来ることはあまりないけれど、製品化が決まって、社内に売れていることを報告する時は、喜ばれるので嬉しくなります。
石川うちの会社はメーカーからの依頼が多いので、自社製品というわけではないけれど、作っているもの見せた時に、「見たことある!」と言われる時とか、テレビに映っているのを見ると、嬉しくなるし、それが一番やりがいを感じる瞬間です。
取材どのように女性が現場で働く壁を乗り越えましたか?
石川東日本金属の加工場で働く女性正社員は私が初めてでした。
でも学生時代からジュエリーを作っていて金属加工に興味があったから、鋳造を後世に遺す手伝いができると思うと全く気にすらなりませんでした。歴史を感じることができる上に金属加工ができるなんてこんないい機会はない!と思い、輪の中に飛び込んでいきました。また、がっつり力作業というのではなく女性でもできる仕事をしているので、仕事において壁はないですよ。
取材ビジネスビジョンなどはありますか?
堂地うちは2人でやっているから会社はそんなに大きくならなくていいかなぁと思ってます。ソラマチでワークショップをやっているとすごく楽しかったからリフレッシュもしつつ今の仕事を続けていきたいですね。
石川第二工場が建って人の動線が変わる中、時間ができたら新しいオペレーションを広げていけたらいいなと思っています。クラシックな技術を磨いてからですけどね。あと、工場に女性がいることも広めたいです。3K(きつい、汚い、危険)のイメージがある中、女性としての働き方にもいろいろあるということをぜひ伝えたいです。
清水去年のスミファ女子ツアーで工場見学の見どころを紹介するカタログを作ったのですが、それが好評で、他の会社さんから同じようなテイストの冊子を作るオファーをいただきました。私は今、自社の広報業務をメインにやっていますが、浜野製作所の中だけに留まらず、ゆくゆくは町工場全体の広報が出来ればいいなぁなんて密かに思っています。受け身よりも押しの広報を目指したいですね! 町工場は職人さんばかりで広報を外部に頼む所も多いですが、それだとどうしても町工場と外部のデザイナーさんとで伝えたいことがずれてしまったりするので、町工場自身がどんどん発信できるよう、自分なりに出来ることをやっていきたいです。
村松私は、個人経営だから会社を広げるよりもお客様を喜ばせたいですね。お客様に魅力を伝えるのはもちろん、職人さんにもお客様のことを伝えてあげたいです。具体的には店を継続することや、工場で広報としてプッシュしていきたいと思っています。
工場で働きたい女性へのメッセージは?
石川私は“すみだの仕事”という求人サイトでこの仕事を見つけて働き始めたんですけど、以前までは男性限定の募集などが多かったのですが、今では工場で女性が役に立つ仕事は増えてきていますよ!と伝えたいです。
清水工場で働く女性は個性的なイメージの方が多いですね。変人と呼ばれても褒め言葉と受け取れる人は向いているかなと思います!
堂地紙が好きな人には向いています!とお伝えしたいです。
堂地石川清水村松とりあえず情熱と覚悟!
墨田区内で交流はあるのですか?
村松もともと交流は薄かったんですよ。でも自分の工場だけを見ていても、今後墨田区の中小企業は経営ができなくかってしまう、ということで墨田区の中小企業向けに“経営塾”である“フロンティア墨田塾”が始まったんです。“フロンティア墨田塾に通うことで、すみだの人との交流がぐっと縮まりました!
石川墨田区役所がとても協力的なんですよ。他の区では考えられないくらい、私達中小企業を支えてくれています。先ほど、村松さんがおっしゃたように、会社同士が交流できる機会として経営塾などを始めてくれたりもしました。また、今回のようなスミファでこのような交流ができて、嬉しいです。私たちの仕事を知ってもらえたり、工場で働きたいと思っている女性に向けてアドバイスできたり、とてもいいですね。
清水私もスミファ以外の交流は少ないですね。墨田区内で会社の名前はよく耳にしても、企業同士でなにかやる機会は少ないみたいな。でもスミファや展示会があったり、イベントで会うことは多いので個人間ではだいたい顔見知りというような感じです。
▲対談場所は浜野製作所にて
▲対談の様子
就活生ということもあって、とても勉強になりました。ありがとうございました。
取材担当:野口英之助(早稲田大学)
中小企業で働くみなさんは、自分の好きなことをやっているんだな、とすごく感じました。みなさんお話してくださるときはとてもいきいきしていて、わたしもこんな風に仕事が好きになれるような会社に勤めたいなと思える会談でした。中小企業ならではの良さややりがいをお聞きできてよかったです。ありがとうございました。
取材担当:山口詩織(早稲田大学)
とても居心地の良い雰囲気の中対談させていただくことができてとても楽しかったです。清水さんのおっしゃるように4人それぞれの仕事に対する情熱を身近に感じることができ、私も自分の本当にやりたいことを職にしようと刺激をうけた対談となりました。これからもたくさんの町工場を訪れて普段都会にいると実感できないような街の温かみを感じたいと思いました。
取材担当:高橋 悠(早稲田大学)