私たちは、ウレタン加工のサトウ化成:佐藤さんと、プラスチック射出成型 チバプラス:千葉さん、非鉄金属の鋳造・加工 東日本金属:小林さん、プレス・金属加工 ヨシズミプレス:吉住さん、4名の対談を伺いました。皆さん、フロンティアすみだ塾をとおして出会ったとのことですが・・・
堺皆さんがフロンティアすみだ塾で一緒に学んでこられたということで、どういった関係性なのかということから、これからの墨田の将来のビジョンについてお聞きしたいなと思います。
小林同期で一年間やってきたのは我々の中では大きかったね。今フロンティアすみだ塾の現役受講生は14期生で、15人います。皆さんが卒業すると、卒業生が163名になります。そうすると、若手の元気な後継者や経営者たちが塾の卒業生だけで163名、つまり163社。やはりそういったところに参加して頑張ろうという意欲のある会社が集まって活躍していく、そこからスミファにもつながっているし。もちろん学ぶんだけども、そこでいろんな人と知り合って、わからないことを教えてもらったり、友達にはできない悩みを打ち明けたり。いろんな良いことがある。163名という数字はすごいんじゃないかな。
千葉まさかの結婚した人もいるからね。婚活の場じゃないのに。
一同笑
小林で、今自分がその運営の協議会というところの会長をやっています。
佐藤163社ってすごいよね。
小林来年で15周年ですしね。スミファに関わっている人は、フロンティアすみだ塾と切っても切れない関係にある人が多いです。
積極的にそういうことに参加する人が多いね。
佐藤つながることで連携したり、相乗効果が生まれたりしています。その一つがスミファであったり、他の活動でも見られるんです。
小林墨田の未来という話でいうと、そうやって若手がどんどん増えていけば、元気な会社や職人たちが増えていくということだから、それを想像しただけで一部分でも明るい未来があるでしょ。それを大切にしていく取り組みの1つがスミファだったりしますね。
吉住でも何年か続けてやらしてもらってるけど、進歩してないな、っていうのがあって。ワークショップというか、体験させるというか。何年も止まっちゃってる気がする。
佐藤うちもワークショップと見学という形なんだけど、なんというのかな、アート展みたいのをやりたいかな、って思ってます。
▲対談スタート!フロンティアすみだ塾で出会った4名
▲対談場所は小村井駅近くにある「からかさ」さんで。新鮮な魚とお酒などを囲んで・・・
つながりがあるのは墨田区独特なんですか?
小林距離感が近いからね。
佐藤あと、様々な業種が詰まってる。
小林ライバルが近くにいないしね。
佐藤区民性かな、みんなフレンドリーで仲が良いんです。
小林それから墨田区の職員さんは区の産業のことをしっかり考えてくれてるし、一緒に飲もうといえば飲んだりもするし。
我々はそれが当たり前だと思ってるけど、他のところはありえない、そこまで付き合ってくれないよっていうしね。墨田区の行政には壁がないというか、入り込んでやってくれてる。そういうところも墨田区の魅力の一つ!区のこれからっていったら、まず自分たちがしっかり会社をいい形で継続していくっていうことだよね。そのためにどうしよう?っていうことだし。
佐藤企業と区が近い距離にいるのはすごく大きいですよ。「こんな施策があったらいいなぁ」とか情報を吸い上げてくれる。
それはほかの区からみたらすごいみたいで、墨田区良いねって絶対言われる。
小林今、凄く盛り上がっている大田区の「下町ボブスレープロジェクト」に関わる方に、「始めるきっかけの一つに、墨田の町工場みたいに工場間での醤油の貸し借りを出来るような付き合いを出来たらなっていうのもあったよ。」と言っていただいた事があって。他からしたらすごいことだけど、我々からしたら当たり前のことって、言われると改めて気が付くよね。
田中フロンティアすみだ塾のような、中小企業の未来のために学ぶという存在は珍しいんですか?
佐藤何かしらありますよ。
小林銀行や信金さんのやるセミナーとは違うというのが、フロンティアすみだ塾の独自性、素晴らしいところです。
佐藤区が継続してくれているのは大きいね。ほかのところだと「何年かしたら卒業した人たちでやってください」っていうところもあるみたい。
小林墨田区は産業の街だから、そこに力入れないとね!
吉住今はほかのところでも注目浴びてるけど、基本はモノづくり・産業の街だね。
佐藤燕三条や高岡でも、行政が入ってきてるね。
田中区も企業も盛り上がっているのは貴重なんですね。
千葉でも今はその企業もすごく減っているよね。
小林それに歯止めをかけないとね。
千葉ピークで9000社くらいあったのかな。
小林今は3000切ってしまってる。
千葉その中の数で言ったらやはりフロンティアすみだ塾の影響は大きいと思う。あと地域性。自転車で南北30分くらいでしょ。
佐藤それは一番でかい。これほどいい立地はないよね。ほかのところもスミファみたいなのをやりたいっていうんだけど、区が大きいっていうのもあって難しいのかな。
千葉墨田は自転車基準だもんね♪
一同笑
千葉フロンティアすみだ塾に来ている若い後継者はみんなどっかでもがいてるよね。何かしらどっかでどうしようと思っている人もいる。
佐藤やっぱり危機感を覚えて必要にならないとその場には行かないからね。5年ぐらい誘ってやっと今年フロンティアすみだ塾に入った人もいるんですよ。社長になったのがきっかけでね。自分の中で、転機というか、危機感というか。
小林だから、行こうと思ったときがタイミングですよね。
佐藤そうそう。そしてそこで出会った人たちっていうのは必然的に出会った人たちで、いい繋がりになるんだよね。
千葉きっかけはいろいろ落ちているから、それをどうするかだね。
皆さんがフロンティアすみだ塾に入ったときは、なにかきっかけはあったんですか?
佐藤僕ら六期の時はちょうどリーマンショックというのがあって。半年後に売り上げがガクンと下がって、これはやばいなと思って。あと、その前からこの先仕事してどうなるんだろう、どうしようという思いがあって入塾した。そして開校式の日に部屋に入ったら、すごい若い人たちがたくさんいて、その瞬間に目の前がポンと開けて、「うわ、楽しいとこ来ちゃった!」って。すごく楽しくって、
楽しいというモチベーションだけはガンガン上がっていった。塾を出てから自分がいろんなところ行きまくって収穫したものも多くて、凄く成長した。この8年は人生の中で一番濃い8年だった。これからも続くけどね!
小林僕たちは若くに入ってね。
吉住25歳ぐらいのときだったかな?
小林28歳とか29歳ぐらいですね。僕なんかは職人としての仕事しかやってない時期にポンッてフロンティアすみだ塾に入ったんです。職人としてやってもう7~8年目とかだったかな。その頃って仕事中に抜けて何かやるとかそういう感覚がなかったんです。
でも、ここに入って、「そっか、自分は職人じゃなくて会社をやっていかないといけないんだ。何も知らない。」ってことに気づいて、いろんな人に会って、話を聞いて、これだけやっていたらいけないんだな、と思って、覚悟を決めていかないといけないな、と気づかせてくれたのが塾だし、塾に入ったことで先輩とかとも知り合うことができた。だから、タイミングとして一番いいタイミングだったと思う。
入社して2年とかで塾に入っていたら、たぶん頭でっかちの生意気なアホになっていたと思う。でも、ある程度仕事を集中してやっている時期に、外に出ることの重要性を知って、皆さんと繋がったことは私にとってはすごく大きいことでしたね。
佐藤必然的に入ってきて、出会っているんだよね。
吉住同期の存在はやっぱり違う(特別)だよね。
佐藤1年どうだった、っていうのも聞くもんね。
・・・ここで、全国的に集まる塾のシンポジウムの話に。
小林北上のシンポジウム行きます?
佐藤営業で前乗りしようかと。
堺シンポジウムとはどのようなものなんですか?
小林全国各地から集まってきて、意見交換したり、近況報告したりまたがんばろうね、っていう集まりかな。
佐藤基本的にはポジティブな話ばかりだからみんな元気になって帰る感じ。主催地の役所や行政の方がPRしたりします。一年後にみんな何しているか分からないからね。何かに繋がるものがあるかもしれないし。
堺それは、なにか新たに一緒に始められる、ということですか?
佐藤そうそう。発見っていうのはその場に行かないと得られないから、行こうと思ったところは必ず行く。就職したら、その場にずっといるんじゃなくて、いろんなところに行って得られる情報の方がもっと役に立ってくるかな。
営業に行くとおっしゃっていましたが、どういう情報元から新たな売り込みを行うんですか。
吉住今はインターネットで情報はもらえるけど、自分は現場を大事にしている。父は営業とかはしたことなくて基本的に来たものを受け入れるというスタンスだったけど、自分はフロンティアすみだ塾に入って、テレアポを取ってという営業はできてないけど、来たチャンスには迅速に動くようになったかな。訪問して、アプローチかける、というのは変わったところ。小さなチャンスは気づかないとどんどん流れて行っちゃうんだけど、チャンスを見つけられるようになったのはフロンティアすみだ塾に入ったおかげだと思うし、それからインターネットで必要な情報を得て、糸口があれば行ってみる。チャンスを見いだせるようになったのは大きいと思う。
堺インターネットやSNSなど様々あるけどなんかヒントがあったら行こう、ということなんですね。
吉住そうだね。現にそうやって大きな仕事に結びついていった。
小林その仕事をやってます、っていうのがブランドになるし、一番の営業だよね。営業って業種によってアプローチの方法が無数にあるからね。
佐藤うちの仕事ってニッチな仕事で、東京でニッチってことは東北に行ったらもっと、っていうこと。
だから、知らないだけでなんか可能性があるかもな、と思ってとりあえず行ってみる。あとは、知り合いがいるところで話をしてくることで、新たな仕事を見つけられる。
まずは行ってみることが大事かな。行ったらなんかゲットできる。それにゲットできなくても情報は収集できるので、行くだけで広がるからね。普段は、しょっちゅう面白いことばっかり考えてる。こんなもの作れないかな、とか。
堺その商品を売りに行くということですか?
佐藤商品というよりはこんなことができます、って売り込むね。需要があればなにか作るし、こんな風にヒントを与えることで、向こうも頭を使う。だから、うちに来た営業さんに対してこういうことできるっていう営業をして仕事取ってきてもらう。そういう情報の拡散をする。
小林うちは何が一番の営業に繋がったかって、無茶な対応をひたすらこなすことであそこは頼めばやってくれるかも、っていうのが何よりの営業になった。お客さんの求めていることをいかに早くこなすかというのは、対応でもあり営業になる。営業って業種によるっていうのはそういうこと。うちみたいな会社はそれがすごくいい営業になる。そういうアプローチのかけかたもあるよね。
田中営業っていうと自分から飛び込んでいくみたいなイメージだったけど、そういうわけではないんですね。
小林“こなす”ことだよね。他でできないことの相談をしっかり対応しているわけだから、それが営業になっているんだよ。営業しなかったわけではなくて、それが営業のやり方だったということ。
千葉確かにいろいろあるよね。
吉住営業は営業でも、これどうですか?という営業はしないんです。というのは、安くみられてしまうから です。向こうのほうが上になってしまう、絶対それだけはしないようにしています。現場も営業マンなんですよ。
田中現場も営業なのですか?
吉住モノを作っている現場。現場がいかにいいか っていうのがお客さんを呼ぶ。
堺それはどうやって相手に伝わるんですか?
吉住見に来てもらうのが一番いいですよね。
佐藤うちは「来てください」って言っちゃいます。材料とかもあるから、それを見ながら、この材料でつくりませんか?って。うちの営業はHPがしてくれていて、問い合わせが入って、じゃあ来てください、という流れですね。会って話すのが一番早いんだよ。「こういうのでやりたい」などがその場で分かるし。
千葉自分みたいに、話しまくって「こんな人もいるよ~」みたいなので仕事が回ってきたりね。
佐藤それはブランディングにもなるんだよね。こういう人とやりたい・千葉さんとやりたい、みたいなね。会社としてじゃなくて社長が出てくることで、個のブランディングもあるんだよ。社長だけじゃなくて、就職したときに会社の名前で仕事するのではなく、個で名乗って仕事しないとだめだよ。自分はこういう人間です、っていうのをさりげなく出していくこと。
千葉いつからほめ上手になったの(笑)
佐藤いやいや、大事なことなんだよ(笑)
会社の名前で仕事を取るのと、個で仕事を取るのは全然違う。今時ずっとその会社にいるわけじゃないじゃない。彼に、または彼女に任せたいっていう自己のブランディングをしていくことが大事。僕らも一緒なんだよ。ちょっと価格は高いけど、彼とやりたい、彼とやったらこの先もうまくやれると思ってもらうのが大事。それは値段じゃない。
吉住大事だね~
佐藤人として付き合いたい、というのがすごく大事な個のブランディング。これは会社だけじゃなくて、勤める人たちにも大事なこと。一人ひとりに大事なことだね。
吉住どこに売り込むかでそれが生きてくるね。企業の購買じゃなくて、設計とか技術とか。自分のところの技術がどこに必要とされているかがすごく大事。
佐藤購買は金額しか見ていないから。そこに行ったらだめ。現場で、これがないと困るから、入れてくれ、っていうところに売り込むと絶対売れる。
田中確かに今まで見学させていただいた会社って社長さんの人柄が一番パイプを作っているというのがありました。
佐藤結局は人なんだよね!
就職について教えてください。
小林うち来ちゃいなよ
一同笑
貝塚(実行委員)大企業にはない、中小企業の魅力を教えてほしいです。
小林自分の存在価値かな。大きい会社は、自分が抜けてもそのまま動くんだろうなというイメージだよね。うちの会社に入れば、いなきゃいけない存在にすぐなれる。
田中それは大きいですね。
小林「私がいないとだめだ」っていう状況になるよね。うちみたいな会社でやりがいに直結するのはそういうところかな。
千葉大企業に入るのはやっぱり安定なのかな・・・
貝塚(実行委員)あとは見つけやすいですよね。大手の求人サイトとか。
佐藤僕はそういうのは嫌いで出さないんだよね。なぜかというと、スペックしか出てないから。資産いくらです、とか。そこではなくて、どんなモチベーションで仕事していて、どんな人が必要で、こんなことしてきた、というのをアピールした記事が先に来ないといけない。それに共感した人に仕事をしてもらいたい。それで地域限定の求人雑誌に出したりしているかな。
小林学生さんはうちみたいな会社を知らずに就職していく人が多い。その中で、皆さんみたいな若い人たちに知ってもらうことがとても大事なんだよね。だから、学校に戻って、モノづくりってこんなのもあるよ、って紹介してくれたり、選択肢の一つとして見てもらうことが大事。
吉住人数が少ないから、入ることでその会社を成長させることができる。それを楽しいって思ってもらうのも大事なことかもね。
貝塚(実行委員)学生さんには、大手だけじゃない感覚も持ってほしいんです。その中で大企業とか中小企業とかは最終的にあるけど、感覚を広げてほしいと思って。
小林だからスミファって現場の声を聞くツールとして学生さんと一緒に進めるといいなとおもいます、それが結果的にスミファも盛り上がるからね!
千葉いい勉強になるよね!
吉住拒まないからね、自分たちは。
佐藤学生さんに声かけてもらえたらいいよね。ただのオープンファクトリーってだけじゃなくて現場の声を聞く場としてね。
吉住自分が思うに、墨田の町工場って一流の技術を持っているところばかり。規模は別としてね。技術でいえば、日本で通じる、世界で通じるところがいっぱいある。そういう魅力を自分の目で見て「これがすごい!」という感性を養う機会というのは貴重だと思うよね。
小林少しでもそういうのに触れる機会だよね。
▲全員での集合写真、仲のよさが伺えます。
取材担当:堺 麻友子(早稲田大学)
取材担当:田中広斗(早稲田大学)